評価軸を共有し環境を整えることで、さまざまな疾病を予防できる。

都市・住宅のデザインや、社会的な環境を変えることで無意識に無理なく病気を予防し、健康な暮らしを目指す「0次予防」の考え方が注目を集めています。日本における0次予防研究の第一人者である千葉大学予防医学センターの近藤克則教授は、行政、企業、研究者、生活者などすべてのステークホルダーが共感できる評価軸を設け、指標を明確にすることで、さまざまな病気を予防し、幸せな暮らしが送れる街づくりを実現したいと考えています。

近藤克則さん
千葉大学 予防医学センター 教授

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター老年学・評価研究部 部長

千葉大学 予防医学センター 教授の近藤克則さん。わたしたちの暮らしを取り巻く建造環境や社会とのつながりを改善することで、さまざまな病気を予防することができるといいます

社会環境を変えることで病気が予防できる

 予防医学には、伝統的に1次、2次、3次という分け方があります。近年注目を集めている「0次予防」は、飲酒、喫煙、運動不足などの生活習慣を改善する1次予防以前に、社会環境を変えることで無理なく病気が予防できるのではないかという考え方です。

 具体的に言うと、その人が暮らしている住宅、公園、道路など人間が人工的に作り出した建造環境に加え、コミュニティのような社会環境などが0次予防に影響を及ぼします。

 断熱性の良い住宅に暮らしているだけで血圧が3mmHg位下がることが知られています。日本では建築基準法が変わるたびに断熱性能基準を上げているので、日本の住宅はだんだん暖かくなっています。実は、薬を飲んだり、運動療法をやったり、減塩したりして下がる血圧と同じくらいの数値が、断熱性能の向上によって得られるようになっています。

 千葉大学 予防医学センター 教授の近藤克則さんは、「例えば緑が多いところに暮らしている人にはうつ症状が少ないとか、歩道の面積が広い街は認知症発症が少ないということが分かってきました。公園や緑が多いところ、歩車分離とか歩きやすい街だと、歩いたり運動している人が多い。そして、こういう環境に暮らしている人には健康な人が多いのです」と指摘します。

人と交流しやすい街には健康な人が多い

 近藤教授はさらに、いろんな人との交流が少ない街には、不健康な人が多いと言葉を続けます。

「ほかの人との交流が少ない人ほど、要介護認定を受けたり、認知症を発症したり、死亡したりする確率が高いという関係があります。うつ症状についても、増える傾向があります」

 このため、コロナ下で人と接する機会が減れば、高齢者の健康状態が悪化すると近藤教授は心配しています。

他者との交流頻度が少ないほど、要介護認定、認知症発症、死亡発生のリスクが高くなります

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