評価軸を共有し環境を整えることで、さまざまな疾病を予防できる。

近藤教授らは要支援・要介護リスクを評価する客観的な尺度を開発しました。0〜48の点数が高いほど、要介護認定率が高まります

 これらの結果を参考に、近藤教授らは、よりきめ細かく評価をするための要支援・要介護リスクの評価尺度を作りました。例えば、「バスや電車を使って1人で外出できますか」という問いに「いいえ」と答えたら2点が加算されます。10問の質問に加え、性別と年齢の点数を足すと、0点から48点のまでの点数が付きます。

 「これは右手の点数が高いほど3年以内に要介護認定を受ける確率が高まるという、要介護認定の先行指標です。30点だと34.8%、3人に1人が認定を受ける。でも20点だったら12.1%で8人に1人が認定を受けるだけで済む。そういう確率を予想できます」

 この評価尺度を使って6年間の給付費を調べてみると、点数が高い人ほどたくさん介護サービスの給付を受けているという関係が確認できたそうです。その結果を受け、この評価尺度をソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の評価指標として使いたいという地方自治体が現れました。

だれも損しない仕組みができる

 SIBは、サービス事業者に対し、事業の成果に応じた成功報酬が支払われます。その原資には社会的課題解決によって浮いた分が財源になります。近年、地方公共団体の財政状況が厳しくなる中で、社会的課題を効果的に解決する手法として、まちづくり分野におけるSIBの活用が期待されています。

 これまで行政が要介護認定になった人の世話をするために、日本全体で約10兆円使っています。もしNPOや民間事業者が高齢者の社会参加や外出を促すサービスを提供した結果、この介護給付費が半分に減ったとすれば、浮いた金額のうち例えば6割をそういうサービスを提供したNPO や企業、資金提供者に還元し運用コストが5%としても、行政コストは15%くらい浮くことになります。

「高齢者は寝たきりにならずに済む、子供たちは介護離職しなくて済む、企業にとっては新しいマーケットができる、行政はコストが削減できる、被保険者は保険料が下がる。つまり、だれも損しない仕組みです」と近藤教授は利点を強調します

 実際に調べてみると、スポーツや趣味の会に参加している高齢者が10%多い保険者では、要介護ポイントが2%くらい低いことが分かりました。全国の今の平均認定率が18%程度なので、1割程度給付を削減することが期待できるそうです。

 そういうことを実際にやってみようと動き出したのが、大阪府堺市や愛知県豊田市です。豊田市は2021年7月から5年間で5億円程度のSIBを活用して、介護予防事業を推進しています。そのなかで近藤教授らが開発した評価尺度が使われます。

 この5年間で、評価尺度がどれくらい正しいかについて、豊田市のデータでも検証できることになります。近藤教授は、その結果で補正をすることで、評価尺度の正確性がより向上できると考えています。

豊田市のSIBを活用した介護予防事業のスキーム。豊田市報道発表資料より抜粋

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