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コロナは課題を見直す良い機会だった
次に森さんは、コロナで観光産業が大きな打撃を受ける中、龍崎さんが次々と新しいサービスを立ち上げた背景について質問しました。
龍崎さんはインバウンドが減ることや、団体旅行が減ることは、長期的なトレンドで見れば絶対起こっていただろうと考えていて、それがコロナで一気に起きてしまったにすぎないと捉えています。
観光市場では遅かれ早かれ過当競争が起きる。観光需要を待ってそこに部屋を当てて行くような観光業には限界がある。龍崎さんはコロナになるずっと以前からそう考えていて、コロナは課題を炙り出す良い機会だったと言います。
「宿泊施設をやるにしても、観光需要じゃない他の需要に対して当てていくような、そういうやり方がないか考えながら事業を作っていたので、自分はコロナショックが起きて良かったなと思っています。苦しくて全身複雑骨折みたいな感じだと思いますが、業界の課題だったり、自分たちの企業の課題だったりが炙り出された、すごく良い機会でした」
2017年頃から戦略上インバウンド客を取ることはやめていたため、昨年3月くらいまでは売り上げに影響はなかったと、龍崎さんは言います。ロックダウン後は、収入源が無くなり、自分自身が困った状況に直面している一個人でもあるので、自分のような人のために何らかのサービスを作るチャンスだと龍崎さんは考えました。
そして、観光事業者を支援するホテルの先払い予約のプラットフォームを作ったり、なんらかの事情で自宅で過ごすことに不安を感じる人のために、空いているホテルの客室を提供する「ホテルシェルター」というプロジェクトを立ち上げたりしました。ホテルシェルターには全国で2000室のホテルが申し込み、大阪市とは協定を結んでいるそうです。
龍崎さんが今取り組んでいるのは「産後ケアホテル」という企画です。宿泊施設が満たせるニーズは観光業だけではないと考えていた龍崎さんは、人生で一番誰かに物理的に支えられることが必要な時にそのケアをしたり、子供を産んだ女性やパートナー、ご家族との関係をサポートしたり出来ないかと考え、「産後ケアホテル」の企画に辿りついたそうです。
DATA
登壇者名 岡田 武史 プロフィール 株式会社今治.夢スポーツ 代表取締役会長 サッカー日本代表元監督
元サッカーの日本代表であり、引退後日本代表の監督を務める。現在はFC今治運営会社 株式会社今治. 夢スポーツ 代表取締役会長、日本エンタープライズの社外取締役、城西国際大学特任教授、日本サッカー協会参与。
今治.夢スポーツでは企業理念として「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会づくりに貢献する。」と掲げている。
2021年2月、FC今治の新スタジアム「里山スタジアム」を建設する構想を発表。サッカースタジアムを核に、地域とヒトをつなぐ次世代文化・交流拠点を目指し、スポーツx 街づくりのビジネスモデルとして期待されている。登壇者名 龍崎 翔子 プロフィール 株式会社L&Gグローバルビジネス代表取締役
東京大学経済学部卒。実業家。ホテル経営者。ポスト・ミレニアル世代を代表する経営者として注目を集める。19歳のときにホテルのプロデュース・運営を行う「L&Gグローバルビジネス」を立ち上げ、富良野、層雲峡、湯河原、京都、大阪で自社ホテルを運営。「ジャケ買いされる空間」「onsen2.0」「#shelovesyou」など、施設ごとに独自のコピーを掲げ、物語性を感じさせる空間をデザイン。
そこから生まれる新しい宿泊体験は若い世代から高い支持を受け、そのプロデューサーである彼女自身もインフルエンサーとして注目を集める。