MAGAZINE
デジタルとリアルの境界領域のインタラクションについて研究を続ける一方で、研究成果の社会実装にも積極的に取り組む落合陽一さん。経済学とコンピュータサイエンスの融合領域である「マーケットデザイン」の研究者として、マッチング理論に基づく社会実装に取り組む小島武仁さん。二人をスピーカーに迎えたCross Talk 1では、理論を社会実装するためのヒントについて議論しました。実社会にある問題を、シーズンドリブンでなく、ニーズドリブンで解決することが重要な課題であり、データ利活用においてはコミュニティのレイヤー毎にデザインを考えるべきだと二人は語りました。
FUSION of benefit 理論の実装が切り拓く、未来社会。
落合 陽一氏 × 小島 武仁氏
データ利活用のデザインでは、
コミュニティーのレイヤー毎に考えることが重要
自由放任では立ち行かないマーケットの仕組みをデザインする
Cross Talk1には、研究や芸術活動を通じて、データ世界と物質世界の融和する世界を探究し活動を続けている落合陽一さんと、東京大学マーケットデザインセンター・センター長で、マッチング理論を駆使して、経済学の社会実装に取り組む小島武仁さんが登場。「FUSION of benefit 理論の実装が切り拓く、未来社会。」をテーマに、理論を社会実装するためのヒントについて議論しました。
司会進行は、医療ジャーナリスト/キャスターの森まどかさんが務めました。
自己紹介を兼ねた活動内容のプレゼンテーションを、小島さんは自身がセンター長を務めるマーケットデザインセンターについての説明から始めました。「マーケットデザイン」というのは、経済学やコンピュータサイエンスの境界領域、融合領域の研究分野の名前で、その名の通りマーケットをデザインするとことをします。小島さんはマーケットデザインの考え方や必要性について、わかりやすい例を示しながら話を進めました。
いわゆるコモディティマーケット、例えば値段を見てみんなが理解をする単純なマーケットは放っておいてもうまくいくと言われています。その一方で、お金で何かやりとりすることができないような領域もたくさんあります。そういうところでは、マッチングがうまくいかないことがあります。
その一例として、小島さんはマーケットデザインセンターで取り組んでいる待機児童の問題を挙げました。
「自治体が調整して、お子さんがどこの保育園入れるかを大規模にマッチしています。公平になるべく無駄のないように、混乱が起きないように、保育園をきちんと配分するには、伝統的な経済学に出てくるように勝手にやってくれではうまくいきません。マーケットデザインは、このように、配分がうまくいかないところに仕組みを作ることです」
配分の仕方はある決まったルールによって作ります。ルールというのはアルゴリズムです。コンピュータアルゴリズムという形でコンピュータ処理をし、みんながなるべく幸せになれるような配分を実現する、それがマーケットデザインだと小島さんは説明します。
DATA
登壇者名 落合 陽一 プロフィール ピクシーダストテクノロジーズCEO / 筑波大学准教授/筑波大学デジタルネイチャー開発研究センター センター長
筑波大学情報学群情報メディア創成学類、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。
筑波大学学長補佐・准教授・デジタルネイチャー推進戦略研究基盤長、大阪芸術大学客員教授、デジタルハリウッド大学客員教授を兼務。
次世代のコンピュータ技術を開発するピクシーダストテクノロジーズ株式会社のCEOも務める。登壇者名 小島 武仁 プロフィール 経済学者/東京大学大学院経済学研究科教授、マーケットデザインセンター・センター長
東京大学を卒業後、ハーバード、イェール、スタンフォードと最高学府に在籍。2012年に米スタンフォード大学でテニュア(終身在職権)獲得。東京大学に新設された「東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)」センター長に就任。人と人、人とモノの最適な組み合わせを考える「マッチング理論」を研究している。