MAGAZINE
OPENING TALK
FUSION of life
生き方のイノベーションと、都市のカタチ。
従来の働き方や生き方を見直す必要性を説いた『ライフ・シフト(東洋経済新報社)』や『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉(プレジデント社)』などの著書で有名なロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンさん。人生100年時代やコロナ後の価値観の変化を前提に、今後私たちが自分の働き方や生き方をどのように設計して行けば良いのか、スマートシティはそこにどう関わるのかについてお話を伺いました。グラットンさんは個人が自分の人生における重要な選択を行い、それに対して責任を持つこと、企業は多様な選択肢や柔軟な働き方を用意して個人をサポートすることが大事だと説きます。スマートシティはそこで育まれるコミュニティとともに、長い人生を健康に暮らすための環境、新産業を創造する拠点として、ますます重要な役割を果たすと断言します。
リンダ・グラットン
組織論学者/ロンドン・ビジネススクール教授
人生100年時代を見据えた
マルチ・ステージ・ライフに取組むべき。
日本のスマートシティは世界のモデルになれる。
テクノロジーの進展と人口動態の変化が生き方や働き方を変える
千葉県柏市にある柏の葉キャンパス駅を中心とした柏の葉スマートシティを舞台に開催されているオープンイノベーションフォーラム、「柏の葉イノベーションフェス」。今年は「READY FOR FUSION?」(心に熱はあるか、融合する準備はできているか?) をテーマに、昨年に引き続きオンラインでの開催となりました。
オープニングトークのテーマは、「生き方のイノベーションと都市のカタチ」。
コロナ禍でビジネスやコミュニティから分断された人々が再び融合し、新しい価値やイノベーションを生み出す、新しい都市の形や果たすべき役割について、ロンドン・ビジネススクール教授で、人材論や組織論の世界的権威であるリンダ・グラットンさんが語りました。モデレーターは医療ジャーナリスト/キャスター の森まどかさんが務めました。
グラットンさんはまず、現在世界で注目されているトレンドを紹介し、それがスマートシティにおける暮らしをどう形作って行くのかについて話してくれました。
グラットンさんがまず触れたのは、ロボティクスやAIの普及、デジタル化などテクノロジーの進展による変化です。
「ロボティクスやAIはすべてのものを変え、働き方を変えていきます。実際、近い将来に60%の仕事は自動化されると考えられています。たくさんの仕事が自動化されると同時に、たくさんの新しい仕事が創出されます。特にデジタルの領域で、5000万の新しい仕事が生まれると考えられています。だからこそスマートシティは重要です。そこから新たな都市の担い手である起業家を生み出すからです」
次にグラットンさんは人口動態の変化について言及しました。
「日本の都市に暮らしている人は、世界のどの都市に暮らす人よりも長寿です。子供が減って少子化しているので、高齢化が進んでいます。ですから、スマートシティを考えるとき、平均年齢が上がっている中でどう暮らしていくのか、どうすれば健康に生活できるのかを考えなければいけません」
グラットンさんは、日本はスマートシティに住むことによってすべての年齢で健康に暮らすにはどうすれば良いのか、そのモデルになることができると、日本のスマートシティのポテンシャルに期待を寄せています。
DATA
登壇者名 リンダ・グラットン プロフィール イギリスの組織論学者、 コンサルタント、ロンドン・ビジネススクールの管理経営学教授及び彼女自身の組織行動論(英語版)上の実績で有名なHot Spots Movementの創業者である。
日本政府が、人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策等を検討するべく設置した「人生100年時代構想会議」に招かれ、国内でも知られるようになった。