MAGAZINE
KASHIWANOHA DISCUSSION 6
FUSION of individuality 未来を変える個性の育み方と、描く次の社会。
中邑 賢龍さんと長谷川 愛さんが創造性豊かな人間をどう育てれば良いかについて議論したCROSS TALK 6。その内容を引き継いだKASHIWANOHA DISCUSSION 6には、科学の楽しさ、面白さを子どもたちに気付かせるきっかけとなる体験を重視し、柏の葉で数々のプログラムを実施してきた羽村 太雅さんが加わりました。すべての子どもにリアルな世界での原体験を与え、学びの面白さに気付かせる事の大切さ、教育や社会のシステムを変えていくことの必要性を、改めて確認しました。
FUSION of individuality 未来を変える個性の育み方と、描く次の社会。
中邑 賢龍氏 × 長谷川 愛氏 × 羽村 太雅氏
みんなが原体験を味わえる仕組みと、
緩やかな雰囲気の中で学べる場を作る
研究機関と街の住人をつなぐ架け橋として始めた
KASHIWANOHA DISCUSSION 6では、CROSS TALK6に出演した中邑さんと長谷川さんの他に、柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)会長の羽村 太雅さんが議論に加わりました。柏の葉を舞台に子ども向け科学教育を実践している羽村さんが加わることで、子どもたちの創造性を伸ばす教育をどう実践していけば良いか、柏の葉という街がどのように関わることができるのか、より具体的な議論が展開しました。
司会進行はCROSS TALK6に引き続き、医療ジャーナリスト/キャスターの森 まどかさんが務めました。
ディスカッションは羽村さんの自己紹介から始まりました。
羽村さんは進学を機に柏の葉にやって来ました。柏の葉は、東京大学の柏キャンパスをはじめ、いろんな研究所や教育機関がある、最先端の研究拠点です。スマートシティとして発展していて、特に教育熱心な子育て世代を中心に移り住んでいる、そんな街だと感じたそうです。
しかし、「大学や研究機関といろんな街の住人たちが共存しているけれども、両者の間には心理的な溝があるように感じていた」と言います。
「例えば大学にいる人たちからすると、街というのは、日常のほとんどを過ごす場所ではありません。一方で街の住人からすると、大学って何をしているところなのかよくわからない」
そこで両者の間を埋めようと考えてスタートした取り組みが、柏の葉サイエンスエデュケーションラボです。大学院生を中心としたメンバーで始め、今では学部生、地元の主婦など、いろんな人たちが一緒になって活動をしています。
羽村さんはイベントを中心にいろいろな活動に取り組んで来た中で、「面白い大人と出会う機会、本気の大人を見つめる時間」がとても重要だと考えています。
面白い大人を見せるという視点からは、若手の研究者や大学院生が自分の研究分野を実験を交えて紹介する、「研究者に会いにいこう!」という取り組みを続けています。大人の本気という側面からは、研究者たちが本気を出して研究した成果を、地域の人や子どもたちに伝えていく場として、古いアパートをDIYで改修した「手作り科学館Exedra」を運営しています。
この科学館は、来場者が来てくれるのを待つだけではなく、展示を外に持ち出して、柏の葉の街のあちこちに展示を配置する「街なか展示」も行ってきました。羽村さんは、「ゆくゆくは、この街の中のどこでも科学に触れられるような、そんな街の未来を描いていきたいと思って取り組みをしています」と夢を語りました。
DATA
登壇者名 中邑 賢龍 プロフィール 東京大学 先端科学技術研究センター 教授
香川大学助教授、米カンザス大学・ウィスコンシン大学客員研究員などを経て、2008年から現職。
テクノロジーで障害のある子どもたちの教育を支援する「魔法のプロジェクト」や異才発掘プロジェクト「ROCKET」などを立ち上げ、2021年6月より「ROCKET」を発展させた「LEARN」を開始。心理学・工学・教育学・リハビリテーション学だけでなく、デザインや芸術などの学際的・社会活動型アプローチによりバリアフリー社会の実現を目指している。登壇者名 長谷川 愛 プロフィール アーティスト。2012年英国Royal College of Art, Design Interactions にてMA(Master of Arts)修士取得。2014年から2016年秋までMIT Media Lab, Design Fiction Groupにて研究員、2016年MS(Master of Science)修士取得。2017年4月から2020年3月まで東京大学 特任研究員。2019年から早稲田大学非常勤講師。
2020年から自治医科大学と京都工芸繊維大学にて特任研究員。「Expand the Future(未来を拡張する)」というコンセプトのもと、アートやデザインを通じて日常の当たり前に問題提起を行う。作品が扱う社会的テーマは広範に渡るが、近年はバイオテクノロジーの進歩がもたらす未来の生殖や家族のあり方について問う作品を多く発表している。登壇者名 羽村 太雅 プロフィール 柏の葉サイエンスエデュケーションラボ 会長
東京大学柏キャンパスで、大学院学生時代に隕石衝突を模擬した実験による生命の材料生成の謎に迫る研究や、天体望遠鏡を用いた地球外生命の手がかりを探す研究に取り組む。
柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)では、"科学コミュニケーション活動を通じた地域交流の活性化"をテーマに小学生向けの理科実験教室や、大人向けのサイエンスカフェなどのイベントを多数開催している。