KASHIWANOHA DISCUSSION 6
FUSION of individuality 未来を変える個性の育み方と、描く次の社会。

予算をかけなくても制度を工夫すればできる

 森さんは次に、いわゆる型にはまった教育じゃないものに触れる機会に格差が出てしまう問題を、どうすれば解消できるかと質問しました。

森さんは、自由な教育に触れる機会に格差が生じる問題をどうすれば解消できるか質問しました

 中邑さんは「年間10枚のお休み券を子どもに配って欲しいといろんな自治体にお願いして、いくつかの自治体はそれに類するようなことをやってくれている」と話します。

 お休み券を持って中邑さんたちが平日行っているプログラムに参加すると出席扱いにし、授業に代えてくれるそうです。自ら教室を飛び出して、自分だけ違うことをやる体験がそこででき、これが真の意味でのアクティブラーニングだと中邑さんは考えています。

 そして、これが実は科学者を育てる、そのマインドを育てる第一歩であり、「予算をかけなくても、ちょっと制度を変え、ちょっと工夫をすればできる」と語ります。

 長谷川さんは、技術で子どもの安全性を担保できれば、中邑さんの提案を実現できるのではないかと話しました。

「(そういうプログラムに参加するのを)ダメだと言うのは、子どもの安全管理が教育者に任されていて、安全性を担保できないというところですよね。だったらいろんな技術を使って安全性を担保できたら、いけるんじゃないかと思います」

緩やかな雰囲気の中で学ぶ場を作り、後は放っておく

 森さんから「多様な人たちと交わり、地域の中で学びを得ていく事に対して何かアイデアはありますか」と聞かれた長谷川さんは、「私はすごくシャイな子どもだったし未だにそう思っているので、人と関わるのが得意でない人はどうすればいいでしょう」と、逆に二人に尋ねました。

 羽村さんは、「子どもたちに変化を求めるのではなく、社会が多様な子どもたちを受け止められるようになればいい」と答えます。

 中邑さんはコミュニケーションが苦手な子は本当にたくさんいると認め、決められた空間の枠を崩す事が大事だと語ります。

「椅子を並べてここに座りなさいということは一切やりません。できればオープンなスペースでやる。そうすると、最初は10メートル離れたところでじっと見ながら話は聞いていて、だんだん近くによって来て、そのうち座る子もいる。目的は明確に設定していなくて、授業が終わってその子が面白かったねと言えばいい」

 このような緩やかな雰囲気の中で学ぶ場を作り、後は放っておく。これを繰り返すことが一番重要だと中邑さんは語ります。

 中邑さんの話についての感想を森さんから聞かれた長谷川さんは、高校時代を思い出したと言います。

 長谷川さんの高校は総合学科でクラスが無く、大学のように授業ごとに集まる方式を採っていたため、中学までは学校嫌いだった長谷川さんも、高校には通えるようになったそうです。そういう意味で、「きっちりし過ぎずオープンにしておくことは、すごく重要なポイントだと感じた」と言います。

 議論も終盤に差し掛かり、森さんは三人に今回の柏の葉イノベーションフェスのテーマ、『READY FOR FUSION?』にどんな印象を持ったか聞きました。

 羽村さんは、FUSIONという言葉には昔アニメの中で出てきた合体する必殺技みたいなイメージがあって、人と人が息を合わせないとできないものだという印象があると言います。

 そういった関係性をうまく作り上げていくのが苦手な人も含めて、うまく巻き込んでできることがあればいいなと思っていると羽村さんは語ります。そして、サイエンスという視点から見ても、FUSIONはすごく大事だと言葉を続けます。

「よく0から1を目指すという言い方をされるんですけど、本当の0から1ってそうそうないと思います。みんな先人たちが積み上げてきたものの上にもう一歩を踏み出す。だからいろんな人たちの知恵とか、知見、蓄積を知って次の一歩を踏み出す場とか、機会が作れたらいいなと思います」

 長谷川さんは何とFUSIONするのかがすごく重要だが、その前に「自分には何が見えていて、何が見えていないかを知る事から始めないといけない」と指摘しました。

 中邑さんは、「それは重要なキーワードだと思いつつ、みんな言うだけで終わるだろうなと考えている」と言います。そして、実際にFUSIONを起こすには、具体的方策、しかも「ガツンとくるようなもの」が必要だと語ります。

「例えばマンション1棟を賃貸で入居募集するんだけど、家賃は50万から5000円まで。これがルーレットで決まる。ふざけていると言われるかもしれませんが、これくらいの(インパクトがある)事が必要だと思うんですよ。小さくてもいいからそういう具体的なものを打ち出してやってみる。そういうところから、変化が起きていくのではないかと思いました」

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