MAGAZINE
CROSSTALK 4
FUSION of real and digital 挑戦を生む、クリエイティブな働き方と場。
自ら仕掛ける人が求められる
森さんはまず、新型コロナウイルス感染が拡大したことによって、働き方の変化やその影響をどう考えているか、遠山さんに聞きました。
遠山さんはコロナウイルス感染が広がった最初の頃に、オンラインの朝礼で社員に「自分の人生はちゃんと自分で小さく設計してね、会社に依存しないでね」と語りかけたそうです。
コロナは、自分の人生や幸せ、その一部として仕事や家族があるということに、気付かせてくれたと遠山さんは言います。そして、一人ひとりが複数の業という意味の「複業」、いろんな社会関係資本を持つべきだと考えています。
「例えば軸になる会社があって、複業がいくつかあって、コミュニティがあったり家族があったり、健康とか、セカンドハウスとか、いろんなものがあって、そういう中でいろいろな社会関係資本を掛け算しながら一人ひとりが価値を広げて魅力的になっていく。どこかに頼っている場合じゃないということを感じさせた時期だと思うし、大きな変化のときだと思います」
コロナ禍をチャンスと捉え、事業や生き方の路線変更に挑戦して良いのではないかと遠山さんは言います。
「ビジネスにおいても、今までやってきたことを大きく変換し、この部分はやめて、次はこっちに行ってみようとか、そういう事がしやすくなった。コロナの言い訳じゃないけれども、動きが止まった時に『このままもう1回やるんだ』じゃなくて、ピボット(路線変更)してみよう、ということがやりやすい。暮らし方もピボットというか、複数、多様に展開していけばいいんじゃないか、トライすればいいんじゃないか。そういうむしろ前向きな感じがしています」
続けて森さんはアフターコロナのビジネスシーンでは、どういう人材が求められるのか遠山さんに問いかけました。
遠山さんは、「お声がかかる人」「自ら仕掛ける人」「そのどちらでもない人」の3タイプの人がいて、これまでは「お声がかかる人」で良かったと言います。
しかし、これからの時代、世の中がフラットになり、組織で守られることがなくなると、ずっと声をかけてもらうのは難しくなると考えています。だから、小さくてもいいから自分で何かを生み出す。何かにトライしていく。そういうことを自分の生活や仕事が盤石なうちにどんどんやっていった方がいいと、遠山さんはアドバイスします。
「自ら仕掛けることに意識的にトライする人が、ひいては会社にとってユニークな、良いチームの力になっていく。自分でハンドルとアクセルを操作し、燃料を自分でくべて自走できる人が求められると思います」
自分の強みを把握することが最低限必要なスキル
森さんから遠山さんの発言についての感想を聞かれたサリーさんは、コロナになる以前から「ワークライフバランスを整えましょう」と言われていたことに触れながら答えました。
ワークライフバランスは、「会社と家で過ごす時間を切り分けることではないので、家で過ごす時間をどういうふうに仕事と趣味、若しくは自分のインプットに充てるかが重要になってくる」とサリーさんは言います。
そして、そういう前提に立つと、怠けているけどインプットになっているとか、自分の趣味の時間だけれど仕事に繋がっているとか、「勤」でもあり「怠」でもあるみたいな時間が増え、勤怠管理のような二項対立の考えが成り立たなくなってきている、と指摘します。
実は仕事をしてないワークライフバランスの「ライフ」の部分、勤怠管理で言う「怠」の部分を自分の核として、仕事が始まる。それが自分の興味に沿っていることなので、上から降ってくる命令よりも、主体的に取り組める。皆がそういう自分の興味とか問題意識を起点に仕事を始める状況に、これからどんどんなっていくとサリーさんは考えています。
続けてサリーさんは、「どういう仕事をするにしても、自分のスタンスとかポジショニングがないと、自分はこのプロジェクトの中でどういうバリューを発揮できるのか言えないので、自分らしさ、自分の強みを把握することが最低限必要なスキル」だと指摘しました。
次に、森さんは新たな挑戦が生み出される場、事業が生み出される環境はどのようなものかとサリーさんに質問しました。
サリーさんは、「まず人と人との繋がりができる事は大前提」だと答えました。そして、「壁打ちができる場所があるのもすごく大事」だと付け加えました。
その理由を「自分が考えている事を自分の中で醸成していくと、どこか偏りのあるものや、どこか垢抜けないものになってしまうから」だと説明します。自分の考えを人に話すことによって自分の中でも整理されるので、小さくても良いから発表や相談できる場所があるのが大事だと考えているからです。
そして、「アイデアが出る場所は会議室ではなく、だいたいタバコ部屋かエレベーター前のロビーで新しいアイデアが生まれると言われている」という事を紹介し、普段自分からはあえて取りに行かなかった情報に遭遇したり、自分が必要ないと思って切り捨てた情報が嫌でも入ってきたりする事で、イノベーションや新しい発想が生まれると話しました。
DATA
登壇者名 遠山 正道 プロフィール 株式会社スマイルズ代表取締役社長 株式会社The Chain Museum 代表取締役社長
2000年株式会社スマイルズを設立、代表取締役社長に就任。
現在、「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」のほか、「giraffe(ジラフ)」、「PASS THE BATON(パスザバトン)」「100本のスプーン」を展開。
「生活価値の拡充」を企業理念に掲げ、既成概念や業界の枠にとらわれず、現代の新しい生活の在り方を提案している。登壇者名 サリー楓 プロフィール 建築デザイナー/ファッションモデル
建築デザイナー、ファッションモデル。ブランディング事業を行う傍ら、トランスジェンダーの当事者としてGSM(Gender and Sexual Minority)に関する発信を行う。
建築学科卒業後国内外の建築事務所を経験し、現在は建築のデザイン、コンサルティングを行う。
2017年、慶應義塾大学大学院在学中に社会的な性別を変え、建築・都市計画のコンサルタントからモデルまでに及ぶ多岐にわたって活動するタレントとして注目されている。