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記憶に残るものが、文化になる
森さんは次に、龍崎さんが語った「誇り」というキーワードを軸に議論を展開します。森さんは、「誇りを持てる街」を実現するために課題に感じることは何かと、小山田さんに質問しました。

小山田さんは自分たちがやってきた事を発信するのが下手な事が課題だと打ち明け、まずこの課題に取り組まなければならないと話しました。そして、コロナは今までやってきたことについて考えるきっかけになったと付け加えました。
「コロナでいろいろなプロジェクトが止まってしまって、特にピノキオプロジェクトという子どもたちと一緒にやるプロジェクトが2年くらいお休みになっているので、さすがに子どもたちは爆発気味です。ただ、その期間がプロジェクトや街、自分がやろうとしていたことを考え直すきっかけになったことがとても良かったと思っています」
コロナが収まったときに何をやるのか。どうやって面白くしていくのか、それを考える子どもたちや大人たちは、これまでもそうだったように必ず「シビックプライド」(街の誇り)を持てるようになると小山田さんは断言します。
まだ歴史が浅い柏の葉にシビックプライドを醸成する仕掛けとして小山田さんたちは「土地の記憶」を作る「ピクニック・エキスポ」、いろんな人に出会わせ「人の記憶」を作る「五感の学校」「未来こどもがっこう」などを実施してきました。
「記憶に残るものが、結局は文化になるということだと思っている」と、小山田さんはプロジェクトに込めた思いを語ってくれました。
本質を見極めることができれば前に進める
議論も終盤に差し掛かり、森さんは二人の話についての感想を龍崎さんと岡田さんに尋ねました。

龍崎さんは「教育」というキーワードがとても大事だと感じたと話しました。
「柏の葉は新しくできた街なので、昔のニュータウンじゃないですけど、同じ世代の人が一気に育っていなくなってしまうリスクも当然孕んでいると思います。継続的に教育に力を入れることで、常に新しい世代や、新しい子育て世代が入ってくることが実現しやすくなると思います。そこを起点に思い出を作る方が増えることで、未来にこの街が続いていくきっかけになるんじゃないかと感じました」
岡田さんは、地球は子孫から借りていると考えれば、いろいろな課題の答えが見えると答えました。

「地球はご先祖様から受け継いだものじゃなくて、未来に生きる子どもたちから借りているもの。借りているものは傷つけたり汚したり壊してはいけない。すべての生物は命をつなぐために生きています。ところが文明人の我々は、今日の株価、今の経済。子どもたちの時代を考えれば、いろんな社会のアジェンダの答えが見える。それを何とかいろんな形でつないでいきたい、そう思いました」
森さんは最後に、柏の葉イノベーションフェスのテーマである『READY FOR FUSION?』や今回の議論についての感想を小山田さんと鈴木さんに尋ねました。
この質問に対し小山田さんは、次のように答えました。
「結局は人間の本質を見極められる人々が育ってほしい。いろんな事に左右されがちですが、本質をちゃんと見極めさえすれば前に進めそうだなということを感じました」
鈴木さんはチームワークの大切さ、人とFUSIONしながら生きて行くことの大切さを改めて感じたと言います。
「FUSIONという言葉より、やっぱりスポーツをやった人間ですからチームワークという言葉が私にはしっくりきます。生きる意味でも仕事をする意味でも、チームワークをしっかり形成して、新しいものを作っていく。皆さんとFUSIONしながら生きていく事の大切さに深く思いを馳せた1日でした」
DATA
登壇者名 岡田 武史 プロフィール 株式会社今治.夢スポーツ 代表取締役会長 サッカー日本代表元監督
元サッカーの日本代表であり、引退後日本代表の監督を務める。現在はFC今治運営会社 株式会社今治. 夢スポーツ 代表取締役会長、日本エンタープライズの社外取締役、城西国際大学特任教授、日本サッカー協会参与。
今治.夢スポーツでは企業理念として「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会づくりに貢献する。」と掲げている。
2021年2月、FC今治の新スタジアム「里山スタジアム」を建設する構想を発表。サッカースタジアムを核に、地域とヒトをつなぐ次世代文化・交流拠点を目指し、スポーツx 街づくりのビジネスモデルとして期待されている。登壇者名 龍崎 翔子 プロフィール 株式会社L&Gグローバルビジネス代表取締役
東京大学経済学部卒。実業家。ホテル経営者。ポスト・ミレニアル世代を代表する経営者として注目を集める。19歳のときにホテルのプロデュース・運営を行う「L&Gグローバルビジネス」を立ち上げ、富良野、層雲峡、湯河原、京都、大阪で自社ホテルを運営。「ジャケ買いされる空間」「onsen2.0」「#shelovesyou」など、施設ごとに独自のコピーを掲げ、物語性を感じさせる空間をデザイン。
そこから生まれる新しい宿泊体験は若い世代から高い支持を受け、そのプロデューサーである彼女自身もインフルエンサーとして注目を集める。登壇者名 小山田 裕彦 プロフィール UDCKアートコミュニケーションディレクター
テクノロジーと人間探求の宇宙開発を地域の暮らしに繋げる種子島宇宙芸術祭をアーティスト、JAXAとともに展開。
柏の葉では、五感の学校などアート&デザインを通して、街と関わるきっかけや試行錯誤と実践を体現できるプロジェクトのディレクターとしてUDCKで活動している。登壇者名 鈴木 岳 プロフィール 株式会社R-body project 代表取締役・博士(スポーツ医学)・アスレティックトレーナー
1998年より全日本スキー連盟専属トレーナーとなり、ソルトレイク、トリノ、バンクーバー、ソチオリンピックにてアスリートの活躍を支えた経験を活かし、一般の方を対象に、アスレティックリハビリテーション、コンディショニング指導を提供するスポーツ運動療法施設「R-body project」を設立。
直近では、東京オリンピック・パラリンピックのフィットネスセンターマネージャー / チーフトレーナーとしても活躍した。