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「地域イノベーション」と「医工連携」に注力
森さんは、「柏の葉国際キャンパスタウン構想」や「柏の葉スマートシティコンソーシアム」が掲げるビジョンに沿った、産官学連携による新産業の育成に今後一層力を入れて行きたいと考えています。それを実現するために東葛テクノプラザが特に力を入れているのが、「地域イノベーション」と「医工連携」です。
地域イノベーションに関する施策としては、年1回開催している「地域フォーラム」があります。毎回テーマに沿った講演と合わせ、入居企業を来場者に紹介・マッチングする試みです。そのほか、国や県の担当者を呼び、次年度の政策や補助金・助成金を紹介するフォーラムを開催しています。さらに、技術系の創業者はどうしても経営に疎い面があるため、技術経営=MOT ( Management of Technology ) をテーマに技術経営実践講座を開催して、経営面をサポートする試みを行っています。そのほか、東葛テクノプラザに設置してある様々な機器を活用してもらい、地域の企業の技術レベルを底上げすることにも取り組んでいます。
医工連携に関しては、国立がん研究センター東病院に1名、千葉大学医学部付属病院に1名、合計2名の医療機器開発コーディネーターを配置しているほか、企業に伴走支援し、シーズとニーズのマッチングを行うメディカルコンシエルジュを3名配置しています。コーディネーターは医師からニーズを拾ってきて相談があった企業にそれを紹介する役割を、メディカルコンシエルジュは企業の相談を受けて試作などのサポートを行う役割を担っています。
森さんは医工連携に取り組む理由を次のように説明してくれます。
「医工連携がなぜ大切かというと、お医者さんはニーズをたくさんお持ちですが、それを解決できる機器を作ってくれる人がいません。また、どういうコンセプトで製造業が動いているかもわかりません。一方、製造業は医療の現場を知りません。私たちは相互に理解していただけるようになることを目指しています」
そのために、医療現場を製造業の人が見て課題を抽出できるようになるためのトレーニングも行っています。千葉大学や国立がん研究センター東病院の協力を得て、医療現場の見学会を行っているほか、製造業の担当者が自ら課題を見つけ、解決策のコンセプト出しをするバイオデザインセミナーなども開催しています。
柏の葉には他の地域に比べて優位性がある
森さんは、柏の葉は他の地域に比べていろいろな面で有利だと考えています。その理由としてまず森さんが挙げたのが、知的な基盤が集積していることです。東京大学、千葉大学、国立がん研究センター東病院、産業技術総合研究所 柏センターなどが柏の葉に立地し、知の集積度が非常に高い点がベンチャー企業や新産業創成にとって有利だと森さんは指摘します。
次に森さんが挙げたのが地域の活力です。つくばエクスプレス(TX)沿線は近年人口が増加し、活気に溢れています。特に柏の葉は秋葉原から約30分、つくば市と東京のちょうど中間くらいに位置するという便利な場所にあります。
森さんが最後に挙げたのが、ベンチャー企業や技術力の高い中小企業が千葉県内でも特にこの地域に集まっていることです。
副所長の鶴岡俊幸さんは、中小企業がこの地域に集積しているのは歴史的な背景もあると説明してくれます。
「昭和以降、東京の江戸川区、台東区、墨田区などから千葉県の船橋より上の東葛飾エリアに、中小企業の工場が移転してきた歴史があります。ですからこの地域にはもともと技術力の高いモノ作り企業が集まっています」
それに加えて常磐道やTXが整備されたことで、物流拠点も増え、大学などの研究機関の進出も進んだことで、この地域の魅力が一層増したと鶴岡さんは指摘します。
森さんは話の最後を次の言葉で締めくくってくれました。
「技術力の高いベンチャーは、最初はそれなりのところまで行きます。しかし、販路開拓などの段階になると、いわゆる『死の谷』を乗り越えられないところも出てきます。そこを皆さんに乗り越えて行って欲しい。そのために、技術だけではなく、経営面を含め、手厚くサポートをして行きたいと考えています」
DATA
会社名 公益財団法人 千葉県産業振興センター 東葛テクノプラザ 設立日 1988年11月 所在地 千葉県柏市柏の葉5-4-6 電話番号 04-7133-0139 URL https://ttp.or.jp/