MAGAZINE
KASHIWANOHA DISCUSSION 3
FUSION of ecosystem 環境問題を解決する、実感のデザイン。
街は完成しない。常にリライトしていく態度が必要
カーボンニュートラルを実現する上で、街やコミュニティは大きな役割を果たすと思うが、どういった都市のあり方を今後望むかと森さんが登壇者の皆さんに尋ねました。
藤本さんは、公民学の柏ITS推進協議会が実証実験を行っている自動運転バスを例にとり、「規制緩和であったり、特区的な話であったり、そういうものにどんどんチャレンジングしていく。そこに住んでいる住民が積極的にそれを受け入れると、いろんな新しい試みが展開できると」答えました。
松島さんは、街は完成しない、常にアップデートされていくのが都市なので、それを受け入れて可能な限りリライトしていく態度が必要だと述べました。「どんどん新しいものが出てくる中で取捨選択をし、一番サステナブルで自然に負荷をかけない暮らし方ができる。その柔軟性をコミュニティが持てると、素晴らしいスマートシティになるのではないか」と話しました。
マクティアさんは、最前線のスマートシティを実現するには市民も巻き込んでの企画じゃないと成功しないと思うと答えました。
いろんな自治体と話をする機会がある中で、苦労するのはやはり市民を巻き込むことだとマクティアさんは打ち明けます。柏の葉は最初から「新しいことを実装する街ですよ」というブランディングを行っていて、それに興味を持って移住する人たちもいると思うので、「そこへみんな同意してやりましょうというのが、大事なのかなと思いました」と話しました。
ディスカッションの最後に森さんは、「FUSION of ecosystem 環境問題を解決する、実感のデザイン。」というテーマに込める思いやメッセージはあるかと登壇者のみなさんに尋ねました。
藤本さんは今日の議論では基本的な技術の話しかしなかったが、走行中給電システムを世の中に実装するには、アプリをどうデザインするか、課金システムをどう設計するか、どんなビジネスモデルが成立するのか、システムを市民に理解してもらうためにどう発信すれば良いか、そのすべてが全部FUSIONだと思うと話しました。
「いろんな人のいろんな思いがちゃんとうまく融合して、こういうことができるようになると思っていて、専門家ばかりじゃいけないというところに尽きると思います」
松島さんは「意識と実践の乖離」をメディアも常に感じているところで、何かそこを繋ぐ作業をこういう機会にやることが大事だと改めて思ったと、感想を述べました。
マクティアさんは、FUSIONの結果として何が生まれるのか、その可能性を見せることが大事だと話しました。
「FUSIONが必要ですよって言うだけではなく、それによって何が生まれるのか、その可能性を見せていくことが本当に大事で、こういう街からどんどん成功事例が出てくるといいなと思いました」
DATA
登壇者名 松島 倫明 プロフィール 『WIRED』日本版 編集長
テックカルチャー・メディア『WIRED』日本版 編集長として「ニューエコノミー」「デジタル・ウェルビーイング」「ミラーワールド」などを特集。東京都出身、鎌倉在住。1996年にNHK出版に入社、翻訳書の版権取得・編集・プロモーションなどを幅広く行う。
2014年よりNHK出版放送・学芸図書編集部編集長。手がけたタイトルに、デジタル社会のパラダイムシフトを捉えたベストセラー『FREE』『SHARE』『MAKERS』や『限界費用ゼロ社会』など多数。一方、世界的ベストセラー『BORN TO RUN 走るために生まれた』の邦訳版を手がけて自身もランナーとなり、今は鎌倉に移住し裏山のトレイルを走っている。
『脳を鍛えるには運動しかない!』『GO WILD 野生の体を取り戻せ!』『マインドフル・ワーク』『NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる』など身体性に根ざした一連のタイトルで、新しいライフスタイルを提示してきた。2018年6月より現職。登壇者名 マクティア・マリコ プロフィール 一般社団法人 Social Innovation Japan 代表理事・共同創設者 mymizu 共同創設者
マイボトルを持参すれば無料で給水できるスポットを簡単に検索できるアプリ『mymizu』をはじめとするサステナブルな取り組みが評価され、昨年11月にグッドライフアワードの環境大臣賞を受賞。
個人だけでなく国に対しても環境意識改革を呼びかけ、環境保護のムーブメントを牽引する。登壇者名 藤本 博志 プロフィール 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 教授 東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻 教授
2001年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後、長岡技術科学大学助手、米国Purdue大学客員研究員などを経て 2010年より現職。
電気自動車をはじめ、ロボットや宇宙機・電気飛行機、工作機械、電動車椅子などの運動制御の研究を行い、2017年、道路からインホイールモーターへのワイヤレス走行中給電に成功。現在、国の走行中給電システム研究開発プロジェクトを率いている。